獣医師コラム Column

獣医師が解説:愛犬や愛猫の麻酔で知っておくべきこと|安全性と手術前の注意点

愛犬や愛猫の手術や処置を行う際、「麻酔が必要」と聞いて不安を感じたことはありませんか?麻酔は犬や猫の安全を守るために欠かせない医療行為ですが、その仕組みやリスクについて理解しておくことは、飼い主様にとっても大切です。

今回は犬や猫の麻酔について、その流れや種類、リスクと安全対策、注意点などを詳しく解説します。

■目次
1.動物病院で麻酔が必要となる主な場面
2.犬や猫の麻酔の流れと種類について
3.麻酔のリスクと安全対策
4.手術前後の注意点とケア
5.獣医師に相談すべき術後の警戒すべき症状
6.まとめ

動物病院で麻酔が必要となる主な場面

動物病院ではさまざまな手術を行う際に全身麻酔が必要ですが、主に以下のような場面で麻酔が使用されます。

歯科治療:歯石除去(スケーリング)、抜歯などの歯科処置。
避妊・去勢手術:生殖器官の摘出手術。
腫瘍の摘出:良性・悪性を問わず、体内の腫瘍を取り除く手術。
骨折の手術:折れた骨を固定するための整形外科的処置。
特殊検査:CT検査やMRI検査、内視鏡検査など、犬や猫がじっとしていなければならない検査。

これらの処置では犬や猫が動いてしまったり、痛みを感じたりしないよう配慮することが重要です。犬や猫は人間と違い、「じっとしていてね」と言っても理解してもらえません。そのため、安全に処置を行うために麻酔が必要となります。

犬や猫の麻酔の流れと種類について

麻酔を使用する際は、以下の手順で実施します。

①術前検査

血液検査やレントゲン検査、心電図などを行い、麻酔に耐えられる状態か確認します。

②前投薬

犬や猫を落ち着かせ、麻酔をスムーズに進めるための薬を投与します。

③麻酔導入

麻酔薬を注射や吸入で投与し、犬や猫を眠らせます。

④モニタリング

手術中は心拍数や血圧、酸素濃度などを専用の機器で常に監視します。

⑤覚醒

麻酔薬を徐々に抜き、犬や猫を目覚めさせます。

また、麻酔にはいくつかの種類があり、それぞれにメリットとデメリットがあります。

<全身麻酔>

全身を眠らせることで、意識を完全に失わせる麻酔方法です。

メリット:大規模な手術を可能にし、体を不動化(体が動かない状態)させることができます。また、手術中の痛みを軽減するために、痛み止めを併用することが一般的です。
デメリット:他の麻酔方法と比べてリスクが高く、麻酔からの回復に時間がかかる場合があります。

<局所麻酔>

体の一部分だけに麻酔をかける方法です。

メリット:リスクが低く、麻酔からの回復が早い点が挙げられます。
デメリット:大規模な手術には適さず、場合によっては完全に痛みを取り除けないことがあります。

麻酔のリスクと安全対策

麻酔には一定のリスクが伴いますが、その影響は犬や猫の年齢や持病の有無によって異なります。

<高齢の場合>

心臓や腎臓の機能が低下していることが多く、麻酔の影響を受けやすいです。

<持病がある場合>

心臓病や腎臓病などの持病がある場合、麻酔薬の代謝や循環器系への影響が懸念されます。

【安全対策】

麻酔の安全性を高めるためには、以下のような対策が実施されます。

<詳細な術前検査>

犬や猫の全身状態を確認し、適切な麻酔計画を立てます。

<麻酔薬の選択>

犬や猫の健康状態や体質に合わせて、負担の少ない麻酔薬を使用します。

<最新のモニタリング機器>

心拍数や血圧、酸素濃度をリアルタイムで監視することで、安全性を確保します。

手術前後の注意点とケア

手術を安全に受け、術後にスムーズに回復するためには、以下のポイントをしっかりと押さえることが大切です。

【手術前の注意点】
<食事制限>

通常、手術開始の8〜12時間前から絶食が必要です。これは、手術中の吐き戻しを防ぐための重要な措置です。

<水分制限>

手術開始の2〜4時間前からは水も控えるようにします。

<健康診断>

手術前に血液検査やレントゲン検査を行い、全身の健康状態を確認します。

【術後の回復期における注意点】
<安静に過ごさせる>

運動を避け、犬や猫がリラックスできる環境を整えます。

<傷口のケア>

傷口を舐めさせないように、必要に応じてエリザベスカラーや術後服を使用します。

<食事と水分補給>

獣医師の指示に従い、適切なタイミングで少量ずつ与えます。

<薬の管理>

処方された薬は、獣医師の指示通りに正確に与えましょう。

これらの注意点を守ることで、手術後の回復をサポートし、合併症のリスクを最小限に抑えることができます。

獣医師に相談すべき術後の警戒すべき症状

愛犬や愛猫に以下の症状が見られた場合は、早めに獣医師に相談しましょう。

・出血が止まらない
・高熱が続く
・嘔吐や下痢が長引く
・食欲が全くない状態が1日以上続く
・呼吸が苦しそう
・傷口が腫れたり、膿が出たりする
・傷口が開いている

まとめ

麻酔は手術や処置を安全に行うために欠かせないものですが、適切な準備と管理があればリスクを最小限に抑えることができます。飼い主様は、獣医師の指示にしっかりと従い、術前・術後のケアを丁寧に行うことが大切です。不安や疑問があれば、遠慮せず獣医師に相談しましょう。

愛犬や愛猫の健康と安全を守るためには、適切な医療を受けさせることが重要であり、それが長く幸せな生活を送るための大切な一歩となります。

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