獣医師コラム Column

犬や猫の尿石症と膀胱結石について|見逃せない初期症状と治療法

愛犬や愛猫がトイレで苦しそうにしている場合、尿石症を患っている可能性があります。
この病気は尿路に結石ができることで排尿時に痛みを伴い、放置すると深刻な健康問題を引き起こすことがあります。そのため、早期に発見し、適切に治療することが大切です。

今回は犬や猫の尿石症について、膀胱結石の違いや初期症状、治療方法、予防策などを詳しく解説します。

■目次
1.尿石症と膀胱結石の違いとは?
2.初期症状と行動の変化
3.犬や猫のリスク要因
4.診断方法
5.治療方法
6.自宅でできる予防策
7.まとめ

尿石症と膀胱結石の違いとは?

尿石症は尿に含まれるミネラル成分が結晶化して結石となり、尿路全体(腎臓、尿管、膀胱、尿道)に発生する病気です。その中でも膀胱結石は、結石が膀胱内にできた状態を指します。

いずれも2〜10歳の犬や猫によく見られ、特に室内飼いの猫や特定の犬種で発症リスクが高まります。

初期症状と行動の変化

尿石症を早期発見するためには、以下の症状や行動の変化を見逃さないことが大切です。

・尿の回数が増える(頻尿)
・尿の色が濃くなる、または血尿が見られる
・排尿時に痛がる様子が見られる
・トイレ以外の場所で排尿する
・排尿姿勢をとっても尿が出ない
・落ち着きがなく、ソワソワする

このような症状が見られた場合は、すぐに獣医師に相談しましょう。

犬や猫のリスク要因

<共通のリスク要因>

犬や猫に共通のリスク要因としては、以下が挙げられます。

・不適切な食事(ミネラルバランスが悪い、過度なおやつ)
・飲水量の不足
・運動不足
・肥満
・ストレス

<犬の場合>

尿石症になりやすい犬種は、以下が挙げられます。

・ダックスフンド
・ミニチュア・シュナウザー
・シー・ズー
・ダルメシアン(特に尿酸塩結石の発症リスクが高い)

<猫の場合>

室内飼いの猫は運動不足になりやすく、尿石症のリスクが高まります。また、ドライフードを中心とした食事は水分摂取量が不足しやすいため、尿石症の発症リスクを高める要因となります。

診断方法

尿石症の診断には、以下の検査が行われます。

<身体検査>

まず、全身状態のチェックを行います。特に腹部の触診では、膀胱や腎臓に異常がないかを確認します。痛みや腫れの有無を確認することにより、結石の存在を示唆する手がかりを得ることができます。

<尿検査>

尿を採取し、以下の項目を詳しく調べます。

・尿のpH:尿が酸性かアルカリ性かを確認することで、結石の種類を推測します。
・結晶の有無:結晶が認められる場合、結石が形成される可能性が高まります。
・細菌感染の有無:尿路感染症が結石の原因となる場合もあるため、細菌の有無をチェックします。

<血液検査>

腎臓の機能や全身の健康状態を詳しく把握するために行います。特に、尿石症が進行して腎臓に負担がかかっている場合や、尿路感染症が併発している場合には、血液中の数値に異常が現れることがあります。

<X線検査>

結石の有無やその位置を確認します。一部の結石はX線で写りやすく、膀胱や尿管にどのように存在しているかを把握することができます。

<腹部エコー検査>

小さな結石や尿路の状態を詳しく確認
小さな結石や、X線では確認しにくい尿路の異常を詳しく調べるために行います。エコー検査では、膀胱や尿管の状態、結石の大きさや数、そして尿路の閉塞状況を確認することができます。

これらの検査を総合的に行うことで、尿石症の有無だけでなく、結石の種類や状態、全身の健康状態を把握することができます。

治療方法

治療方法は結石の種類、大きさ、位置によって異なります。 主に内科的治療と外科的治療が選択され、それぞれに適したアプローチが取られます。

<内科治療>

・抗生物質の投与(細菌感染がある場合)
・尿石を溶解する療法食の給与
・水分摂取量の増加

<外科治療>

・結石の外科的除去(大きな結石や尿道閉塞の場合)
・尿道瘻設置術(再発を繰り返す場合)

治療の選択は、結石の状態や犬や猫の全身の健康状態を考慮して獣医師が判断します。

自宅でできる予防策

尿石症を予防するためには、以下の日常生活でのケアが重要です。

<水分摂取量の増加>

・常に新鮮な水を用意する
・ウェットフードを積極的に取り入れる
・水飲み場を増やす、または流水式の給水器を使用する

<適切なフードの選択>

・尿石症予防用の療法食を選ぶ
・ドライフードとウェットフードを併用する

<運動量の確保>

・定期的な散歩や遊びの時間を設ける
・室内飼いの猫にはキャットタワーなどの運動設備を用意する

<ストレス軽減>

・清潔で快適なトイレ環境を維持する
・騒音や環境変化などを最小限に抑える

<定期的な健康診断>

年に1~2回の健康診断で尿検査を行う
・異常がなくても定期的に状態を確認する

まとめ

犬や猫の尿石症と膀胱結石は、早期発見と治療が鍵となる病気です。日頃から愛犬や愛猫の様子を観察し、異常が見られた場合は早めに動物病院へ相談しましょう。また、適切な食事管理や生活環境の改善、定期的な健康診断を通じて、予防に努めることが大切です。

愛犬や愛猫の健康を守るために、毎日のケアを見直し、より快適で健康的な生活を送れるようにサポートしていきましょう。

 

犬や猫、小動物(ウサギ、フェレット、ハムスター、鳥、ハリネズミ)など幅広い動物の診療を行う動物病院
『林獣医科病院』

TEL:088-631-4141

住所:徳島県徳島市南島田町2丁目119-2

診療案内はこちらから
アクセス・診療時間についてはこちらから