獣医師コラム Column

老化のサイン、見逃していませんか?|獣医師が教えるシニア犬や猫との幸せな暮らし方

「最近、愛犬や愛猫が眠ってばかりいる…」そんな変化を感じたことはありませんか?毎日一緒に過ごすからこそ、小さな老化のサインを見逃してしまうこともあります。犬や猫の老化は避けられませんが、早めに気づいて適切なケアをすることで、長く健康で快適な生活を支えることができます。

今回は愛犬や愛猫の老化について、そのサインやご家庭でできるケアのポイントなどをご紹介します。

■目次
1.犬や猫のシニア期はいつから?
2.犬や猫の老化のサインとは?
3.シニア期に多い症状と対策
4.ご家庭でできるシニアケア実践ガイド
5.動物病院における終末医療
6.まとめ

犬や猫のシニア期はいつから?

犬や猫の平均寿命はおよそ14歳とされています。シニア期に入る年齢は犬や猫によって異なりますが、一般的には以下の年齢がシニア期とされています。

・小型犬の場合:6~7歳頃
・大型犬の場合:5~6歳頃
・猫の場合:7歳頃

犬や猫はこのような時期から体の機能が少しずつ低下し、老化が始まります。

犬や猫の老化のサインとは?

犬や猫に以下のような変化が見られたら、老化のサインの可能性があります。

<体の変化>

・食欲の低下
・運動量が減り筋肉が衰える
・毛艶が悪くなる
・背中が曲がる
・聴力が落ちる

<行動の変化>

・睡眠時間が長くなる
・昼夜が逆転する
・トイレが近くなり、失敗が増える
・夜鳴きが増える

シニア期に多い症状と対策

<認知機能の低下>

犬や猫も認知症を発症することがあります。症状として同じ場所をぐるぐると回り続けたり、夜鳴きが増えたりすることがあります。認知症を完全に防ぐことは難しいですが、日中の散歩や日光浴で脳に刺激を与え、生活リズムを整えることで夜鳴きの軽減につながります。

<関節の痛み>

シニア期になると、関節の痛みや違和感から散歩を嫌がったり、高いところに上がれなくなったりすることがあります。これを予防するためには、滑りにくい床材や段差のない住環境を整え、足腰に負担をかけないようにしましょう。

<内臓機能の低下>

シニア期になると内臓機能も低下します。

(例)
・心臓機能の低下:疲れやすい、運動を嫌がる
・腎臓機能の低下:水を大量に飲む、痩せる、吐く

これらの症状が見られたら、早めに動物病院へ相談することが重要です。

ご家庭でできるシニアケア実践ガイド

<食事管理>

シニア期の犬や猫には、体に優しい食事を与えることが大切です。以下のポイントを参考にしてください。

・柔らかく消化しやすいもの
・栄養価が高いもの
・水分を多く含むウェットフードやスープ状のフード
・匂いや嗜好性が高いもの

<適度な運動>

筋力を維持するために軽い運動を続けることが大切です。ただし、無理な運動は足腰に悪影響を与えるため、段差や階段などの上下運動は避け、負担の少ない平坦な場所を選びましょう。特にシニア犬の場合、1回10分程度の散歩を1日2~3回に分けて行うと良いでしょう。

<快適な住環境づくり>

老化に伴い体温調節機能が弱くなるため、快適な室温を維持することが大切です。また、滑りにくい床や段差を減らした環境を整え、猫の場合はトイレを浅いものにするなどの工夫をしましょう。

<定期的な健康診断>

定期的な健康診断を受けることもシニア期の犬や猫にとって大切なケアの1つです。若い頃に比べて体力が低下しているため、病気の早期発見と早期治療が大切になります。また、病気によっては治療費が高額になることもあるため、不安がある場合はペット保険への加入を検討するのもお勧めです。

動物病院における終末医療

病気や老化により余命わずかとなった状態を「終末期」と呼び、この時期に行われる医療を「終末期医療(ターミナルケア)」といいます。人間の場合には患者本人の希望に沿った医療を行いますが、言葉を話せない犬や猫の場合は、飼い主様の希望が大きな役割を果たします。

<ターミナルケアの例>

・痛みの緩和:痛み止めの処方
・呼吸のケア:咳止めや酸素吸入 など

また、人間の医療との大きな違いとして、動物医療では安楽死という選択肢が認められています。とても難しい選択ですが、犬や猫の痛みや苦しみを取り除いてあげられず、苦しい期間が長く続いてしまうような子では選択肢の1つとして大切です。家族で話し合い、愛犬や愛猫にとって最善の選択を考えましょう。

終末医療において、愛犬や愛猫のために考え抜いた選択はすべて間違いではありません。ペットロスで苦しい時には専門のカウンセリングなどもあります。いざという時に後悔のないよう、愛犬や愛猫との日々を大切に楽しく過ごしましょう。

まとめ

愛犬や愛猫との暮らしには、楽しい時間だけでなく、老化や病気と向き合う時間も訪れます。早めの対策と適切なケアで、愛犬や愛猫が快適な生活を長く送れるようにサポートしましょう。

愛犬や愛猫に少しでも気になる症状があれば、お気軽に動物病院にご相談ください。

 

犬や猫、小動物(ウサギ、フェレット、ハムスター、鳥、ハリネズミ)など幅広い動物の診療を行う動物病院
『林獣医科病院』

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