犬や猫の白内障は、目の水晶体とよばれるレンズの部分が濁ることで視力低下を引き起こす疾患です。進行すると視覚を失う可能性もあるため、早期発見と早期治療が重要です。
今回は犬や猫の白内障について、症状や治療方法、ご家庭でのケア方法などを解説します。
■目次
1.犬や猫の白内障とは?
2.白内障の症状とチェックリスト
3.診断方法
4.治療方法
5.進行した白内障を放置するリスク
6.白内障の犬や猫との暮らし方
7.よくある質問
8.まとめ
犬や猫の白内障とは?
白内障には「若年性」と「老齢性」の2つのタイプがあり、発症の原因や進行速度がそれぞれ異なります。
<若年性の場合>
・発症年齢:1歳未満~6歳程度の若い犬や猫
・特徴:進行が早く、視覚障害を引き起こしやすい
・主な原因:先天性の水晶体異常、糖尿病などによる代謝性疾患
<老齢性の場合>
・発症年齢:7~8歳以上の高齢の犬や猫
・特徴:緩やかに進行する
・主な原因:加齢による水晶体の老化や代謝異常
どちらのタイプも進行すると視覚が失われるリスクがあるため、早期発見が鍵となります。
白内障の症状とチェックリスト
白内障の症状は、進行状況に応じてさまざまです。以下の兆候が見られる場合は注意してください。
<初期症状>
・目が白く濁る
・視力が低下し、暗い場所でためらう様子が見られる
・歩き方が慎重になる
・段差で躊躇する
・目に反射する光の見え方が鈍くなる
<進行時の症状>
・頻繁に物にぶつかる
・視覚障害による不安感や過剰な吠え、怯え
・併発症状として、目の充血や目をこする動作が増える(緑内障、ぶどう膜炎などの合併)
これらの症状が見られた場合、早めに動物病院を受診することをお勧めします。
診断方法
白内障の診断には、以下の検査が用いられます。
<スリットランプ検査>
目に細い光をあてて眼球内の状態を調べ、水晶体の白濁度合いを確認します。
<眼底検査>
特殊なレンズを用いて網膜や視神経乳頭を観察し、網膜剥離の有無などを調べます。
治療方法
白内障の治療方法は、若年性と老齢性でそれぞれ異なります。
<若年性の場合>
進行が早いため、手術が治療の主軸となります。
<老齢性の場合>
進行が緩やかな場合、点眼薬で進行を遅らせることが可能です。手術が必要な場合は、術前検査で麻酔リスクを慎重に判断します。
また、手術の適応年齢は15歳未満が目安で、それ以上では麻酔のリスクが高まるため、手術以外の治療を選択することが一般的です。
進行した白内障を放置するリスク
進行した白内障をそのまま放置すると、以下のような合併症が起こる可能性があります。
<緑内障>
目の圧力が高まり、激しい痛みや視力の喪失を引き起こします。
<ぶどう膜炎>
目の充血や痛みを伴い、場合によっては失明に至ることがあります。
<網膜剥離>
視覚の完全な喪失につながります。
白内障の犬や猫との暮らし方
白内障の犬や猫は視覚障害によりストレスや不安を抱えがちです。そのため、少しでも快適に暮らせるように以下の環境を整えることが大切です。
<明るい時間帯に散歩する>
・夜盲症(暗い所に目が慣れにくくなる)の症状が現れるため、暗い時間の散歩は避けましょう
・暑い時期は日中出歩くことは難しいため、涼しい夜間に懐中電灯などで道を照らしながら歩いてあげることをお勧めします。
<夜間の照明を工夫する>
・夜間でも部屋の照明は消さないようにし、優しい暖色系のライトを設置しましょう
・センサーライトで犬や猫が動いたときに自動で点灯する仕組みを導入するのも良いでしょう
<家の中の配置を固定する>
家具の配置を変えないことで、視覚が不自由な犬や猫でも方向感覚を維持しやすくなり、安心感を得られます。
また、前述したように視覚の低下はストレスや不安を引き起こすことがあるため、愛犬や愛猫の行動を観察しながら適切な環境を提供しましょう。
よくある質問
Q:白内障は予防できますか?
A:白内障の予防には抗酸化作用のあるサプリメントや紫外線対策が有効です。また、定期的な健康診断で目の状態をチェックすることも大切です。
Q:手術の成功率はどれくらいですか?
A:手術の成功率は80〜90%程度と高く、視力回復が期待できます。
Q:術後の視力回復はどの程度ですか?
A:網膜剥離などの合併症がなければ、生活に支障のないレベルの視力が得られることが多いです。
まとめ
白内障は早期発見と適切なケアにより進行を遅らせることができ、手術により視力を回復させることも可能です。日頃から愛犬や愛猫の目の状態を観察し、異常を感じたら早めに獣医師に相談してください。大切な家族である犬や猫が快適に暮らせるよう、白内障のケアをしっかりと行いましょう。
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