獣医師コラム Column

【獣医師監修】愛犬・愛猫の糖尿病ケアガイド|症状から治療方法まで解説

糖尿病は人間の生活習慣病として知られていますが、犬や猫でも見逃せない疾患の一つです。この病気を放置すると深刻な合併症を引き起こし、命に関わる場合もあります。そのため、早期発見と適切な治療が重要です。

今回は犬と猫の糖尿病について、症状や原因、治療方法などを解説します。

■目次
1.糖尿病とは?犬と猫の違い
2.糖尿病の症状について
3.糖尿病の原因について
4.診断方法
5.治療方法
6.ご家庭でできる糖尿病ケア(日々の管理のコツ)
7.糖尿病の合併症と進行した場合のリスク
8.まとめ

糖尿病とは?犬と猫の違い

犬や猫の糖尿病には、以下のようにそれぞれタイプが異なります。

<Ⅰ型糖尿病>

主に遺伝的要因や膵臓の疾患が原因で、インスリンの分泌が不足します。

<Ⅱ型糖尿病>

インスリン自体は正常に分泌されますが、肥満やストレスなどの環境要因によってインスリンの効果が低下します。

犬では主にⅠ型糖尿病が多く見られ、猫ではⅡ型糖尿病が多く見られるのが特徴です。
また、Ⅱ型糖尿病では治療や管理を適切に行うことで、稀に症状が良くなる場合があります。

糖尿病の症状について

犬や猫が糖尿病を引き起こすと、以下の症状が見られます。

・活力の低下
・食べているのに痩せてくる
・水を大量に飲むようになる、尿の量が増える

糖尿病になると、血液中の糖を細胞内に取り込めなくなるため、食事をしっかり摂っていても体重が減少してしまいます。また、血液中の糖が増えることで血漿浸透圧(水分を保持する力)が高まり、尿の量が増えるため、それを補うように水を多く飲むようになります。

糖尿病は若い犬や猫にも見られることがありますが、特にシニア期に近い年齢の子に多く見られます。そのため、愛犬や愛猫が「痩せてきたのは年齢のせい」と考えず、早めに動物病院を受診して、隠れた病気がないか確認しましょう。

糖尿病の原因について

犬と猫の糖尿病はインスリンの分泌能や作用の異常により起こりますが、犬と猫ではそれぞれ原因が異なります。

<犬の糖尿病の原因>

・加齢
・自己免疫による膵臓β細胞の破壊
・慢性膵炎やクッシング症候群による二次性糖尿病

<猫の糖尿病の原因>

・加齢
・肥満によるインスリン抵抗性の増加
・運動不足
・慢性膵炎やクッシング症候群

特に猫では肥満が最大のリスク因子です。脂肪細胞が分泌する物質がインスリンの働きを妨げるため、体重管理が重要です。

診断方法

糖尿病の診断では血液検査で血糖値を測定し、尿検査で尿糖が陽性かどうかを確認することが重要です。血液検査では、採血時点の血糖値(血中グルコース濃度)と、フルクトサミン(過去1〜2週間の平均血糖値がわかる)の値を確認します。

特に猫の場合、動物病院に訪れた際のストレスが原因で一時的に血糖値が高くなることがあるため、正確な血糖値が把握しにくいことがあります。検査結果だけでなく、問診の内容も含めて総合的に判断する必要があります。

治療方法

糖尿病の治療方法は、犬や猫ともにインスリン注射と食事管理が基本となります。

高血糖はさまざまな健康問題を引き起こすため、血糖値をできるだけ正常に近い状態にコントロールすることが重要です。そのため、体外からインスリンを補うインスリン注射を行います。ご自宅でのインスリン注射は難しそうに思うかもしれませんが、当院では注射の方法を丁寧にお伝えします。

また、食後の血糖値の急激な上昇を防ぐために、高繊維や低炭水化物、高タンパクのフードを推奨します。

ご家庭でできる糖尿病ケア(日々の管理のコツ)

糖尿病の犬や猫の食事は血糖値の急上昇を防ぐために、少量を複数回に分けて与えることが大切です。また、水をたくさん飲むようになるため、いつでも自由に飲める環境を整えてあげましょう。飲水を制限してしまうと、脱水症状を引き起こす可能性があるため注意が必要です。

さらに、おやつを含む脂質やカロリーが高い食べ物は控えるようにし、体重管理とカロリーコントロールを徹底しましょう。

糖尿病の合併症と進行した場合のリスク

糖尿病を放置すると、全身の血管を傷つけるだけでなく、以下のような合併症を引き起こすことがあります。

<糖尿病性ケトアシドーシス>
脂肪分解によるケトン体の蓄積が命に関わる状態を引き起こします。

<白内障や神経障害>
犬では白内障を引き起こすことがあり、猫では後肢の神経障害が多く見られます。

<腎不全や感染症>
慢性的な高血糖による器官障害を起こします。

まとめ

糖尿病は犬や猫の健康に深刻な影響を及ぼす病気ですが、適切な診断と治療、日々のケアにより、コントロールしながら充実した生活を送ることが可能です。そのため、愛犬や愛猫の体調に少しでも異変を感じたら、迷わず動物病院を受診しましょう。

 

犬や猫、小動物(ウサギ、フェレット、ハムスター、鳥、ハリネズミ)など幅広い動物の診療を行う動物病院
『林獣医科病院』

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