獣医師コラム Column

徳島の動物病院林獣医科病院のインフォームドコンセントについて|動物医療における信頼関係の重要性

ペットに最良の検査や治療を提供するうえで重要なのが、インフォームドコンセントです。この考え方が十分ではないと、飼い主様が不安を感じてしまったり、トラブルを引き起こしたりする可能性があります。

今回はそもそもインフォームドコンセントとは何かをご説明したうえで、動物病院での実例やその重要性についてご紹介します。

■目次
1.インフォームドコンセントとは?
2.動物医療における信頼関係の重要性
3.徳島の動物病院で行われるインフォームドコンセントの具体例
4.インフォームドコンセントのメリット
5.当院が実践するインフォームドコンセントの方法
6.当院におけるインフォームドコンセントの成功例
7.飼い主様が知っておくべき! インフォームドコンセントで確認すべき5つのポイント
8.まとめ

インフォームドコンセントとは?

インフォームドコンセントとは医療の分野で生まれた概念で、検査や治療を進める際に獣医師が飼い主様に対して「インフォーム=説明」したうえで、飼い主様が「コンセント=同意」するという考え方です。
その際、獣医師が一方的に「説明」するのではなく、飼い主様の考えや疑問点、ご家庭の事情などをお聞きしたうえで、双方が納得するような選択肢に結びつけることが重要視されます。

動物医療における信頼関係の重要性

検査や治療をスムーズに進めるためには、獣医師と飼い主様との信頼関係が大切になります。よい信頼関係ができていないと、これから行う検査や治療が本当に動物にとって最適なのか、何か裏があるのではないか、家庭状況を話していいのか、と疑う原因になってしまいます。
そうした状況では、獣医師が「説明」しても飼い主様は「同意」できず、インフォームドコンセントが成立しなくなります。

インフォームドコンセントがないと、さまざまな獣医療トラブルが発生する危険性があります。
1つの例として、抗菌薬の使用方法が挙げられます。たとえば、犬や猫の下部尿路疾患は細菌感染によるものが多く、治療のために長期にわたって抗菌薬を投与しなくてはいけなくなります。また、指定の抗菌薬を指示された期間服用しないと、薬剤耐性菌が現れるおそれがあります。こうした情報の「説明」が抜ける、あるいは飼い主様が「同意」したにもかかわらず忠実に実行できなかった場合は、治るはずの病気が治らなくなってしまいます

徳島の動物病院で行われるインフォームドコンセントの具体例

動物病院では、以下のタイミングでインフォームドコンセントを実施しています。

<診断時>
・保定
・採血
・検査時の鎮静・麻酔

<治療方針決定時>
・治療の選択肢の提示

<手術前後>
・手術方法の選択肢の提示
・手術のリスクと必要性に関する説明

<終末期医療>
・積極的治療と緩和療法、あるいは安楽死の提示

インフォームドコンセントのメリット

インフォームドコンセントをとることには、以下のようなメリットがあります。

飼い主様の不安軽減と信頼関係の構築
治療の選択肢と費用の明確化
ペットにとってのQOL(生活の質)向上
獣医療トラブルの予防
飼い主様の自己決定権の尊重

当院が実践するインフォームドコンセントの方法

当院ではインフォームドコンセントを行う際、以下の点を心がけています。

わかりやすい説明と資料の活用
十分な質問時間の確保
セカンドオピニオンの推奨
手術同意書の作成と保管

当院におけるインフォームドコンセントの成功例

今回の記事では、実際に当院でインフォームドコンセントの重要性を実感した例について、いくつかご紹介します。

1つは猫の口内炎の手術に関するものです。
猫の口内炎は発症原因を特定できないことが多く、手術をしても中にはよくならないケースもあるため、それを事前に飼い主様にお伝えしてご理解いただいたうえで治療を進めています。

もう1つは犬の白内障の手術に関するものです。
白内障の術後には、さまざまな合併症が起こることが知られています。研究によって差があるものの、5.1~38.2%で緑内障を、0~4.7%で網膜剥離を発症すると報告されています。そのため、飼い主様には事前に術後の合併症リスクについてご理解いただいたうえで、治療を進めています。

飼い主様が知っておくべき! インフォームドコンセントで確認すべき5つのポイント

インフォームドコンセントは、獣医師にとっては身近なものですが、飼い主様にとってはあまりなじみがないかもしれません。獣医師の「説明」に対して、以下の5つのポイントを中心に確認するとよいでしょう。

診断名と病状の詳細
推奨される治療法とその根拠
治療のリスクと副作用
代替治療の選択肢
予後と長期的な管理方法

まとめ

ペットにとってよりよい獣医療を受けてもらい、飼い主様のご不安を少しでもなくすためにも、インフォームドコンセントはとても重要です。検査や治療に対して疑問に思う点がございましたら、お気軽に獣医師までご相談ください。

 

<参考文献>
Cataracts in 44 dogs (77 eyes): A comparison of outcomes for no treatment, topical medical management, or phacoemulsification with intraocular lens implantation – PMC (nih.gov)
Long-term complications after phacoemulsification for cataract removal in dogs: 172 cases (1995–2002) in: Journal of the American Veterinary Medical Association Volume 228 Issue 1 () (avma.org)
Development of glaucoma after cataract surgery in dogs: 220 cases (1987–1998) in: Journal of the American Veterinary Medical Association Volume 216 Issue 11 () (avma.org)
Secondary glaucomas in the dog in North America – Gelatt – 2004 – Veterinary Ophthalmology – Wiley Online Library

 

犬や猫、小動物(ウサギ、フェレット、ハムスター、鳥、ハリネズミ)など幅広い動物の診療を行う動物病院
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